ガン治療への活用

私たちが病気になるとき、その原因はいろいろ考えられます。そのひとつが遺伝子の異常です。生まれながらに、または後天的な理由で遺伝子の塩基配列におかしな部分があり、それが原因となって体に悪影響が出る場合があるのです。そのような病状を根本的に治療するためには投薬などの処置では不十分で、遺伝子そのものを治療する必要があると考えられています。これを遺伝子治療と呼び、海外を中心に研究が進められている先進的な治療法です。

遺伝子治療を簡単に説明すると、遺伝子に異常がある患者から細胞を取り出し、正常な遺伝子を組み込んで細胞を増殖させます。その後、細胞を患者に戻すと遺伝子が正常に機能して症状が抑えられるのです。このような遺伝子治療は、ガンの治療への活用が期待されています。ガンの恐ろしいところは、ガン細胞が激しく増殖・転移するところにあります。そこで、ガン細胞の活動を抑える効果を持つ遺伝子を患者の体内に注入すると、ガン細胞の増殖を抑制しアポトーシス(自滅)へ誘導する効果があります。この治療はガン細胞のみに働くため、患者の肉体的な負担は少なく、副作用も少ないとされています。また、他のガン治療法(放射線治療、抗ガン剤の投与)との併用もできるため、治療効果を高めることも可能です。まだ研究の途上にある治療法のため、日本では一般的な治療法にはなっていません。国内では一部の医療施設がアメリカで開発された治療用遺伝子を用いて、ガン治療にあたっています。